#148 Article 22016 Posted at 1995/10/08 15:16:28 by DELTA (MAP5804) [HORROR]

Subject: ドレスを着てきた場合

結婚式当日になりました。ものうい表情のまま、やっこちゃんは起き上がってベッド
  の後始末をします。シーツは暖炉の火に放り込み、新しい物に取り替えました。
   「あらやだ、ドレスのまま寝ちゃったのね」
   今からアイロンを当てればシワは消えるかもしれません。やっこちゃんはドレスを
  脱いでシワの具合を確かめます。しかし何という事でしょう、ドレスにはシワだけで
  なくシミまで付いています。やっこ印のシミ抜き剤でも式までに取るのは無理でしょ
  う。あれは一晩漬け置き型なのです。
   やっこちゃん、一瞬困った顔をしましたが、シミの原因となった行為に思い至ったの
  でしょう、真っ赤になって頬を押さえ、ちょっと嬉しそうです。
   でもやっこちゃん、どうするんです?ドレスはこれしか有りませんよ。
   やっこちゃんは私の質問には答えてくれません。不敵な表情で笑っています。
   「うふふふっ…くすくすっ……うふふ…」

   着飾った賓客でごった返す結婚式場では、やっこちゃんのドレスも地味な方に属し
  てしまいます。ましてシワが寄ってるとか、微かにシミが付いてるなどといった些事
  に注意を払う人など誰もいません。
   鼻^H花束を抱えて歩くやっこちゃんを、リーヤが呼び止めます。
   「なあやっこちゃん、どっか怪我でもしてんのか?何か血の臭いが…」
   …と、ここまで言ったところでマリンちゃんが飛んできて、リーヤの唇に人指し指を
  押しつけます。真剣な表情で首を横に振り、「しーっ!」と命令します。
   「お、おう。よくわかんね~けど、今のは黙ってりゃいいんだな?」
   マリンちゃん、「そうなの。ごめんなさいね」と言いたげな顔を縦に振ると、やっこち
  ゃんを部屋の隅に連れて行きます。そして人をはばかるように、
   「あたしフィンガータイプの持ってるけど、使う?」(マリンちゃん、泳ぎますからね)
   やっこちゃん、一瞬きょとんとしますが、
   「ありがとう。でもあたしなら大丈夫よ、心配しないで」
   と作り笑いを見せます。
   「そう…こんな時に始まって大変だろうけど…『おめでとう』って言わせてね」
   「うん…女の子だもん、しょうがないよ…」
   やっこちゃん、マリンちゃんの胸に顔をうずめます。ああどんなにか「マリン、本当は
  違うの…実はね…」と打ち明けたかったことでしょう。親友を騙す罪悪感でやっこち
  ゃんの肩が震えます。マリンちゃんはそれを誤解し、悲しげな表情でやっこちゃんの
  髪をなでます。リーヤと結ばれる見込みの無い自分の未来を見る思いで。

   花束をたづさえて自分の方に近づいて来るやっこちゃんを見て、どろしーちゃんの
  顔にさっと警戒の色が広がります。魔力感知と毒物感知を人に見えないようにかけ、
  反応が無いのを知ってようやく警戒を解きます。
   「おめでとう、どろしーちゃん」
   どういう顔をして花束を渡せばいいとゆうのでしょう。やっこちゃん、複雑な表情を
  しています。その中の不敵な笑みの部分を、せいいっぱいの強がりと取ったどろしー
  ちゃん、(「ようやく諦める決心がついたのね」)と優しい気持ちになります。
   「ありがとう。あなたにもきっといい人が見つかるわよ。ブーケを投げてあげるから
  受け取ってね」
   やっこちゃん、弱々しく見えるように作り笑いを浮かべて踵を返します。
   そして…

   どろしーちゃんの視線は、去って行くやっこちゃんのスカートの一点に吸い込まれ
  ます。ぎょっとして花束を取り落とすと、やっこちゃんが悪魔の様な冷たい笑みを浮
  かべて振り返ります。


    MAP5804  こういうのも何か好き  DELTA_WAVE

P.S  こっちを正統続編とし、Art.22002はキャンセルします