#13 Article 10271 Posted at 1995/06/28 17:22:40 by WAK (MAP5274) [READ]
Subject: Re:*32 必勝!ダンスパーティー /10268 .......... /18318(#148) /18317(#148)
長文注意!って、なんか毎度の事ですいません。 >言語の偉い人が出てきそうなので#13にも振ります(^^;) 私は、ここでいう"偉い人"に該当はしませんが、こういう話題は私の持ち得 る数少ないウンチクを傾けられる絶好の機会ですので、シャシャリ出ます。 >略す時に「合っている/間違っている」を考慮するのが東京、 >「言いやすい/言いにくい」を考慮するのが関西って所かな。 「言いやすさ」についていうと、これは何処でも無意識のうちに要求されま す。けれど、東京(関東)の略語は、必ずしも関西方面の人にとって発音しやす い語であるかというと、そうは言えない事情があります。 日本語のアクセントは高低アクセントで、語によって、音節ごとに音の高低 が決まっています。分類は、概ね京都式、東京式、アクセントの型を区別しな い、の3通りあります。そしてよく知られていることですが、京都式と東京式 では、同じ語で逆のアクセントになることもよくあります。アクセントが違う と、言いやすい区切り方も違ってきます。全て低いアクセントで"マック"なん て、関東でも関西でも、なんか呼びにくいですよね。 あと、違うモノに同じ略語をつけることが平気な関東…というのもあるかも しれません。ちょっと違う例えで申し訳ありませんが、万葉集で、大和地方で は助詞"ガ"と"ノ"を明確に使い分けていますが、東国(東歌)では、"ガ"の際立 った多用が目立つ、というのがあります。で、これは関東地方が言葉に対して 感覚が鈍かった、ということではなくて…。 古語では、"ガ"はウチ扱い、"ノ"はソト扱いでした。ここで注意すべきこと は、畏敬の対象、恐怖、身分の低い他人もソト扱いになります。逆に、自らを 卑下する場合はウチ扱いが使われます。東国は文化の後進地域で、あづまびと はトヒトでした。畿内では、何かにつけて東国を低く見てましたから"ガ"で遇 し、東国でも自らを卑下して無意識にせよ"ガ"を多用したのではないか、と思 われます。 しかし、鎌倉時代になって、東国が西国を実力支配の下に置くようになると 事情が変ってきます。畿内でも、"ノ"と"ガ"の使い分けが行われなくなってい きます。つまり、いままで例外的に存在していたことが、はっきりと判る形で 東国の影響下に置かれるようになります。併せて、旧来の区別が行われなくな って、使い分けの必要が薄れていった。もともと使い分けをしなかった東国で は、なおの事使い分けという意識が薄れって行った…。 で、関西の、かっては先進地域だったという誇り(?)が、こういう歴史的過 程をバックにして、関西人の持つ、東国への対向意識を余計に燃やすのではな いかな?だから、関東ではパソコンとハンバーガーを一緒にマックと呼ぶのに 対し、"マクド""マッキント"と使い分けたり…。かっては無意識に語を使い分 けていたが、今や東国主導の"使い分けをしない"事を逆手にとって、自らのア イデンティティを誇示しているとか。 でもでも、関西の皆さん!案ずるには及びません。いまや関西の言葉は日本 中を席巻しています。例えば、"ど"。どまんなか、ど根性、ど偉い、なんにで も"ど"を付けちゃう。これは関西生まれで今や皆使っています。語感が嫌なん で、私は使わないけれども(私は、まんまんなか、って言うなぁ)。 あとは、近江で使いだした"~させていただく"という用法。これも私は使わ ないが、いまや横着な現代人が、これで敬語を間に合せちゃってる。今流行の 「二重敬語」のはしりかな?意味は違うけど…。んで、この語を平気の平座で 使っているオヤジが「二重敬語なんかけしからん!近ごろの若い奴は」なんて 言ってるのを聞くと、チャンチャラおかしいです。 因みに、東京における"ど"の多用は戦後からの筈。"~させていただく"も、 早くは関東大震災後、谷崎潤一郎が使った用例が二件。『春琴抄』と、後に谷 崎松子となる女性に当てたラブレター。なお、一般にはこれも戦後かと思いま す。要するに、夏目漱石や二葉亭四迷は、「どまんなか」とか「~させていた だく」を使わなかったワケですね。 私、こういう話なら、かのウンチク大王、唐沢俊一氏をしのぐ自信がありま す。←馬鹿 WAK(MAP5274) P.S 使い分けと言えば、"に"と"へ"の使い分けとか、"御一緒"と"お供"の違いと か、"して貰いたい"と"して欲しい"の違いとか、色々と言語マニアには面白い 話があります。