#127 Article 716 Posted at 1993/07/09 18:59:15 by シェレフ (MAP3491) []

Subject: 情景 夜桜公園

ちら、ちら、ちら…
  月明りの中、風に舞散る桜の花びら
  春の少し暖かな夜風に誘われたかのように、
  夜桜を楽しんでいるかのような一人と一匹

  ここは、夜の夜桜公園



  くぴっ
「吐夢くーん。」
  ベンチに腰掛け、夜空の闇に映える桜の花を眺めている吐夢くん
  その声のする方を見遣った吐夢くんの目に映ったのは、またたび酒の入った
おちょこを持ったみかんの姿でした。

「あっ、みかん、そんなものいつ持って来たんだよ。」
  ぷはーーーっ
「いいの、いいの、オレこれ飲んでたらしーわせだから。」
  みかんは吐夢の抗議の声も気にならないかのように、2盃目のまたたび酒をちびちび
と舐めていました。

「吐夢くんもいっかが。」
  両手に乗せたおちょこを吐夢くんの目の前に差し出したみかんでしたが、
「ぼくはいいよ。」
  という吐夢くんの言葉に
「うっっ、うっっ、吐夢がいじめた、いじわるした~っ。」
  涙をいっぱいためた目をうるうるさせながら、吐夢くんに迫るみかんでした。

「なっ、なに言ってんだよ、みかん、おまえ酔ってるだろ。」
  一瞬たじろいでしまった吐夢くんでしたが、すぐに攻勢に転じようとしました。
「オレ、酔ってなんかない。」
「吐夢が飲まないのは、オレのこと嫌いだからなんだ。」
 みかんはすねたように横を向き、吐夢くんの方をちっらっと訴えるように見ました。

「まったく、酒ぐせ悪いな。」
「一杯だけだぞ。」
 みかんの良心に訴える攻撃が効いたのか、吐夢くんはついにお酒の相手をすることに
なってしまいました。

 てぃちゃっ
 うっ・・・やっぱり変な味
 くぴ
「ふーっ」
 吐夢くんは、おちょこに注がれたまたたび酒を息を止めるようにして、なんとか
飲み干しました。

「吐夢くーん、さあもう一杯。」
「もおいいよ。」
「まあ、遠慮なんか吐夢くんらしくない、まだあるんだから大丈夫。」
「あ、あーっ。」

  こうして一杯だけだったはずのお酒でしたが、次々とついでゆくみかんを止める事が
出来ずにいた吐夢くんは、それをすべて飲み干すはめになってしまいました。



・・・・・・



「まあ、二人ともこんな所で寝ちゃって、風邪ひいちゃうわね。」

 二人だけで公園の中をめぐり歩いていた、いつまでも仲の良い草凪家のお父さんお母さんの藤冶郎さんと菊子さんは、ベンチでお酒に酔って寝てしまっている吐夢くんとみかんを見つけました。二人はあまり困った風もなクスッと微笑み
 藤冶郎さんは吐夢くんを背負い、菊子さんはみかんを抱えるように腕の中に抱くと、
公園を後に家路へと歩き出しました。



  ちら、ちら、ちら…
  月明りの中、風に舞散る桜の花びら

 すべては、星空のきれいな春の夜の出来ごと


                                                ~シェレフ(MAP3491)~