#124 Article 4984 Posted at 1997/05/20 05:43:43 by ジャック (MAP6793) [TIGA.37]
Subject: Re:*4 花 (Re: 実相寺昭雄がティガを撮る!) /4981 ... /4896 /4881
やっと録画を観ました。 仕事が多忙なばかりに、随分書き込みがご無沙汰になってしまって‥‥ 私のメイプルデビューの挨拶がてらの初書き込みがこの件でしたから、無念です。そ んなわけなので、この責任はキッチリとらせて貰います(笑)。 さて感想ですが‥‥ いつものオープニングに被る「原案 実相寺昭雄」という名前がやはり凄い。 監修の高野宏一、企画の満田カズホと並ぶと、もういつの時代の番組だって感じです な。脚本は劇エヴァ編集版の薩川昭夫ですか。 続いて「美術監督 池谷仙克」! あのガッツ星人やノンマルト、ダンカン、ツイン テールのデザイナー池谷である。 「特技監督 服部光則」。実相寺が監修するオリジナルビデオ映画でよく監督やって る人ですな。「超高層ハンティング」とか(観たことないけど)。 そして最後に「監督 実相寺昭雄」。この文字をテレビで観られるとは‥‥ オープニングだけで興奮してしまったが、あえてCMを飛ばさず落ち着いて本編へ。サ ブタイトル「花」(漢字一文字!)と表示されるいつもの「ズンッ」というSEに続い てなにやら轟音が‥‥と思ったらダイブハンガーの浮上音だったのね。さすが音の演 出にも特徴ある実相寺、なんて納得する間もなく画面は分割されてGUTS装備描写のオ ンパレードが同時に描写、GUTSについてのおさらい的ナレーション‥‥に混じってイ ビキが? と思ったらナレーションの回転数が下がっていきなり居眠り中のホリイ隊 員の鼻の穴のアップ。「アップの実相寺」健在を見せつける。だいたい防衛チームの だらしない一面を見せるのは「変化球監督」を自認する実相寺の得意技だ。今回もそ う来たか、と思わずうなづいてしまう。 そしてシンジョウの「春眠暁を覚えず、か」で場面転換して満開の桜。それに屏風絵 が分割画面でモンタージュされていく。文芸映画のようで薫り高い画ヅラだ。桜の映 像はフィルム撮りのようだ。 イルマ隊長(高樹澪は『Qザ・ムービー』で実相寺体験済みだ)と長官の会話も、バ ッチリの実相寺アングル(本人だから当たり前だ)。最近実相寺にカブレた演出家が 多いが、やはり本家は格が違う。メチャメチャかっこいい画ばかりが続く。作戦室の 画も、物をナメてキャメラを傾けるいつもの実相寺アングルだけでなく、照明も落と し気味(いつもは壁は真っ白に当てられている)。パネルの光源部分を美しく際だた せるためであろう。さらにパネル光源は滲んだようにフレアーがかかっている。しか し人物の部分は鮮明なので、単純なフィルター効果とも思えない。光源に当たる位置 のフィルターにワセリンを塗りつける『帝都物語』で見せた手法を使っていると見た。 ハレーションも意図的に随所に入っており、独特の雰囲気だ。また、作戦室のSEも、 聴いたことのない「コン、コン」といった断続的な機械音が不気味に流れ、往年の東 宝SF映画が醸し出していたような、機械の不気味さが感じられる。 そして花見をすることになるGUTS(ダイゴ除く)。防衛隊の花見といえば『空からの 贈り物』(スカイドン)だが今回は夜桜だ。この場面になるとクラシック調のソプラ ノ曲やピアノ曲が流れ、バカ騒ぎをしているのに壮麗な雰囲気だ。花見の席で隣り合 わせた和服の美少女と婆や、そしてちな坊!(実相寺が長男と称しているヌイグルミ のクマ。『Qザ・ムービー』にも出演している)純和風な要素がどこかに出てくるだ ろうとは思ったが、ここまで徹底するとは参った。GUTS面々の会話にたびたび挿入さ れるユーモラスな石仏の顔が和風ムードに拍車をかける。 一方本部で留守番のダイゴ(私の予想通りのこの扱いに笑えました)は諜報部のおっ さんと怪しい妨害電波を調べる。台詞と台詞の間に入る「カーン」という金属的なSE は『怪奇』で多用するようになった手法で、緊張感の一助として効果的だ。しかもCM 入り前のアイキャッチの役目も兼ねさせるのが巧い。 CM明けてBパート。ムナカタ副隊長が実は文学青年だったことが判明する(おまけに 怪獣に和歌を詠んで聞かせたいとまで思っていたとはっ! やはりタダモノではな い)。和服の娘がブッ倒れて介抱するイルマ。濃く焚かれたスモークと逆ライトに浮 かび上がるイルマたちのシルエットが美しい。危機的ムードになると、頻繁に挿入さ れる石仏の顔も先ほどとは違って、怖く見えてくるから不思議だ。石仏の転がる桜の 庭の近くとはとても思えないモダンな地下道で正体を現す和服の女たち。石仏のよう な顔をした宇宙人だ。池谷さんの趣味か実相寺の注文なのか、最近は土偶とか仏像を モチーフにすることが多いようだ。 宇宙船に連れ込まれたイルマが拷問される(そうこなくっちゃ!)。この船内のイ メージも幻想的で秀逸なのだが、外観が素晴らしい。乗り物として、兵器としてのリ アリズムでなく、一個のオブジェとしてのデザイン。ウルトラの円盤はこうでなくて は(怪獣もまたしかり)。未知の文明、未知の生物の畏怖すべき荘厳さを表現するに は、既存の知識でのリアリズムより、シルエットや面構成の意外さ、インパクトが有 効だと思う。 なんだかんだあってダイゴ君はティガに変身、等身大で円盤に殴り込みをかけてイル マを助け出す。まるでセブンだ。これもまたウルトラの楽しみの一つだろう。円盤は 墜落して爆発、危機一髪イルマを救い出したティガは、巨大化した宇宙人と対決する。 着ぐるみのアクションが嫌いで、シーボーズやスペル星人の時などは全部ストップ モーションで表現していた実相寺のこと、どうせアクションは短いんだろうと思った ら大間違い。手を変え品を変え、様々な見せ方で延々とアクションを続け、今までの ティガの中でも最も長いのではと思わせるほどの長さだ。最初は寺の屋根をナメて普 通の立ち回り。いつもの音楽がかからないところが、妙に緊張感を呼ぶ。やはり時折 石仏が挿入され、「カーン」というSE(錫杖の音か)が頻繁に入る。同じアクション を、引きと寄り2つのキャメラで撮ったフィルムを繰り返すなど、熟練を感じさせる 巧い編集が心地よい。 と、油断していたらトンデモないことが始まった。宇宙人がフッと見えなくなったか と思うと、突如舞台が暗転? 思い切り引いた画でスポットライトを浴びたティガと 宇宙人。花吹雪が舞い、歌舞伎のような拍子木(じゃなくてあの床をバンバンたたく あれ、何て言うのかな?)の音が鳴り響く。荷重(スタジオの天井の足場)のライト がバレているのを、ワセリンを塗ったフィルターで知らん顔する手法は『帝都』の将 門の首塚のシーンとまったく同じだ。いや、ワセリンで誤魔化しているのはまだいい。 アオリの画などは、花吹雪を降らすカゴがバレている(確信犯であろう)。完全に 「舞台」として見せている。さらに万華鏡のように鏡で虚像を並べてみたり、フェロ 板(特撮で四次元の表現などに使う柔らかい鏡面の金属板)を使って画面をグニャグ ニャと歪めてみたり、もう好きなことやってる。おまけにカラータイマーが鳴り出す とソプラノコーラスが流れ始める。ホリイ隊員が寝ぼけていることだし「夢か現か」 という言い訳は立つだろうが‥‥大胆すぎる。 ラストはダイゴも合流して花見再開、という画がフォーカスアウトして終わる。 実相寺というと奇異なアングルばかりが取り沙汰されるが、それを表現として裏打ち している光と陰へのこだわりは凄まじい。今回も最初から最後まで、とにかく美しい 映像のオンパレード。テレビの枠の中で実相寺の要求に応えたスタッフは本当に称賛 に値する。 エンディングを見て驚いたのは、「コダイプロデューサー」として宍倉徳子(初代マ ンのスクリプター)とともに、実相寺といつも組んでいた特技監督の故・大木淳吉の 名が並んでいたこと。大木監督は昨年の暮れに亡くなっているので、今回参加できな かったのがファンとして心残りだが、この企画の立ち上げには関わっていたと見える。 撮影の中堀正夫、照明の牛場賢二はともに実相寺のプロダクション「コダイグルー プ」のメンバー。普段は芸術映画や舞台照明で様々な受賞歴を持つベテランだ。この 人たちの仕事をタダでテレビで観られるなんて‥‥そしてもう一つ驚かされたのが 「音楽協力」。音楽コーディネーターやらピアノ、ソプラノ、メゾソプラノ、そして 録音スタジオまで書いてある。流用やなかったんかい! なんと贅沢な。 しかしこうやってダラダラ感じたこと書き並べましたけど、本当に観ていて興奮しま した。実相寺だから、という好事家としての見方で見始めましたが、観ていて純粋に 映像の力に引き込まれていきました。実は放映前まで「子供番組の枠で実相寺はどう かな」と批判的な立場をとっていたのですが、観た結果考えを改めました。子供は常 に背伸びをしたがりますから、たまにはこんなのを与えてやるのもいいのでは、と思 うのです。話が全然分からなくても、画を見て怖いとかカッコイイとか思えればそれ でいいのじゃないか、と。まあいろいろそんなことを考えましたが、個人的結論は、 いやホンマにええモン観せて貰いましたわ。 次回予告の「若き参謀」って『ガメラ2』の石橋保か? 出世したなあ(笑) PS. 興奮して長文になってしまいましたが、アップロード直前にボード読んでみたら凄く浮いてますね、この文章。やっぱ濃すぎるのね、私。どうも失礼しました。 場をわきまえぬ真性特撮オタク ジャック(MAP6793)でした。