#12 Article 6877 Posted at 1990/02/26 03:50:33 by ムツキ (MAP1482) [COLUMN]

Subject: 連載コラム Vol.2

********************************************************************************       連載ネット・コラム 「フリーライターの甘美なる日々」

           第2話「THE詭弁(言い訳)」前編
******************************************************************************** さて・・・1話でも書いたように、編集者の追随から逃れ、締切を延長してもらうためには、それ相当の言い分、理由、事情が必要となる。つまり・・・言い訳である。
 予定していた期日に、依頼されたモノがあがらない。通常ならば、依頼主がそれを厳しく追求しなければならない(それが編集担当者の仕事)そして、判断して常識的な配慮をするのがビジネスである。
 一般の企業ならば、人材的または物理的なことから約束期限の延長が許される。
 しかし、個人経営の我らが不良ライター諸君には、そんな理路整然とした理由で締切を破るものはいない。ただ単に遊んでいたのだから・・・
 また、担当者から「そんな言い訳は聞きたくない!」と言われては、創造者たるプライドに傷が付く。ましてや、これからの飯の種に関係してくることであるからして、ヘタな言い訳はぜったいにしないのである。
 では、どんな言い訳を用いるのか・・・それが問題である!
 小生もまだカケダシの頃、言い訳の初歩とも言える「親族の死亡説」を乱用したことがある。
 1度や2度までなら、温情で許せるが、度重なっては虚構となってバレるのである。
 すでに小生が実行した「親族の死亡説」が真実ならば・・・現在は天涯孤独の身となって、いまごろ北風が吹く街中で、独り「みなしごのバラード」を口ずさんでいるだろう。 それに、本当に親族が急死して、葬儀のために原稿が遅れたことがある。
 その時の編集者のことばは次のようであった・・・
 「こんどは誰が死んだんだぁ?ナニ!祖父だと・・・それはこの前死んだはずじゃ!」 その質問に対して、小生の弁明は・・・
  「こんどこそ本当です!信じてください!!」
 これらは、まるでイソップ童話の「狼と少年」である。
 つまり、バレるようなウソはつかないほうがよいという見本である。
 では、どのようにして締切破りの完全犯罪をするかである。
 小生の知人で業界1の詭弁考案者がいるので紹介しよう。
 この場合、前例と同じ「親族の死亡説」を用いるのだが演出効果が、小生のソレとは桁が違う!
 まず、新聞の死亡告知欄をチェックして、同姓の葬式を調べるのである。(参考までにその人物の姓は日本国中どこにでもあるポピュラーな姓である)
 そうした一流誌の死亡告知欄に出るくらいだから、有名な寺院でとり行なわれることが多い。
 人が多くて誰が親族なのかはわからないドサクサの中へ、担当者を呼び出して言い訳をするのである。もちろん、喪服を着用である。
 これだけ巧妙にしかけられたロケーションでは、さすがの担当者も疑う余地もないのである。
 おまけに編集部からはそれ相当の香典(相場は1万円)がでる。
 これは、まさに犯罪である!詐欺である!しかし、詭弁としたらこれほどの完成度が高等なものは見たことも聞いたこともないのである。芸術である!技巧である!詭弁の匠である!
 しかし、それだけの労力を使うなら最初から、原稿を上げたほうが得策ではないかと考えるのは小生だけであろうか・・・?
  それでは次回だが、この「言い訳」についてまだまだ恐るべき事実があるので、ソレを紹介したいと思う。
 題して、「フリーライターの甘美なる日々」 第3話「THE詭弁」後編である。

追伸:これを書くくらいなら仕事をすればいいのだが・・・