#12 Article 6875 Posted at 1990/02/26 02:29:00 by ムツキ (MAP1482) [COLUMN]

Subject: 連載コラム Vol.1

********************************************************************************       連載ネット・コラム 「フリーライターの甘美なる日々」

             第1話「締切が堕ちる日」
******************************************************************************** よく業界で「オチる」とか「オトす」とか言うが・・・
 これらは決してい万有引力による物体が落下することではなく(念のため)
 つまり約束した期日に、依頼された原稿が完成せず、その原稿の商品価値を放棄しなければいけない状況にたたされ、なおかつ作家生命に終止符を打たなければならない場合をも意味している。
 小生の場合も、この悪夢にも似たカタストロフィーを数回ほど経験したことがある。
 作家である以上、ある種のプライドと経済的事情から・・・原稿を依頼される時、担当者に対して「まかしてくださいヨ!」とか「こんなの朝飯前です」などと傲慢に満ちた意志表示をすることが多々ある。
 そして担当者から「締切」という名の業界の鉄則を承った時点で、見えない時限爆弾のカウントダウンがはじまるのである。
 しかし、締切まで1週間以上ある場合(仕事の内容にもよるが)たいていの作家たちは遊びまくる!(少なくとも小生の仕事仲間はこのタイプばかりである)この時とばかりに快楽に走るのである・・・
一般のサラリーマンでは体験できない平日からの朝寝、朝酒、朝風呂を貪る。
 「あぁ、これがフリーライターの醍醐味だぁ!」とか「充電時間も大事だよなぁ」と自己弁明の語録をくりかえすのである。
 そして、いつしか時間の流れが判決を下す時が来る。
 明日が締切という日になって、そうしたライターたちは幼いころ母親から教訓として聞かされた「アリとキリギリス」の童話を嫌でも思い出すことになる。
 そして一度、電話のベルが鳴り響くと担当者からの原稿上がりの確認と思い込み、急激な心拍数を体験する。
 その発信元が誰からなのか判別できない不便な文明の利器に対して、猛烈な嫌悪感を覚え、渾身の勇気を絞りだして受話器を取るか、それとも居留守を決め込み、呼び出し音を拝むように数えるか・・・である。
 そのため関係者には留守番電話が、ブーム前から設置されているのである。
 近年この留守番電話と共にめまぐるしい普及率を記録しているのがファックスである。 そこでライターたちが、仕事の効率をアップするために、ファックスを導入することになる。
 このファックスなる文明の利器も、我ら不良ライターにとっては、厄介な代物である。 編集者たちにとって、不良ライターの原稿の進行具合が電話回線で、即!確認できるのである。
 以前までは、原稿の遅れを郵便事情のせいにしていた言い訳を駆使できたのだが、これからはそうはいかないのである。
 そして、原稿の催促もファックスで転送してくることがある。
 「原稿はできましたか?」などという穏和な文体から、「どうなってるんだ!これでは堕ちるぞ!責任はとってくれるんだろうな!」などの暴力団にも似た脅迫文までである。 ではここで、小生の貴重な「催促ファックス・コレクション」から傑作を紹介することにしよう!
 「ドラクエ4はあずかった!プレイしたければ早くシナリオをあげろ!」某E社
 「失礼かと存知ましたが、貴殿の部屋へお邪魔した際にゲームボーイ(テトリス付)を失敬しました。原稿がアップするまでお返しはできかねますので悪しからず」某出版社
 「吉祥寺のパブに打上げ用のボトルをキープしましたので、原稿を!」某スタジオ
 「このままではカンヅメを余儀なくされますよ!もうあんな悲惨なことはしたくありません!どうか私をオニにしないでください」某女性担当者
 「私はサラリーマンです。家族がいます。どうか私の生活も考えてください」某氏
 等など・・・
 では、このような各担当者からの恐喝にも似た催促から、どのようにして逃げることができるのか・・・それは芸術までに鍛え上げた「言い訳」である。
 次回はその「言い訳」のテクニックを掲載したいと思う!
 題して「フリーライターの甘美なる日々」第2話「THE詭弁」にご期待ください。