#12 Article 5340 Posted at 1989/08/14 19:19:27 by NYA (MAP000) [COMIKET]
Subject: コミケQUEST
先日、知人に連れ出されて、初めて晴海のコミックマーケットなるイベントに行ってみ たので「開き直り」の意見を交えて道中記を述べてみたいと思う。 当日は、うだる程の晴天で、外出するよりはエアコンにあたって涼しく音楽鑑賞してい たい私を、知人に半ば無理やり誘い出された。晴海埠頭行きのバスは満員御礼である。 バスの中は冷房が殆どきかない状態だった。その乗客のうち、一般客よりコミケへ行く 客のほうが圧倒的に多いという事に気付いたのは、現地に到着する直前まで満員だった バスが、現地に到着したとたんに殆どがら空きになった時だった。 お昼近くに会場へ到着したのはいいが、警備員が言うには「満員だからねぇ、前夜から 並んでいた人もいて3万人前後は入っているから、入るのに2~3時間かかるよ」との 事。「たかがアニメファンやマンガファンの集会」などとタカをくくっていたのが裏目 に出てしまった様である。しかしここで怯んでいては来た意味が無い、という事で、人 ごみのすき間をぬって建物の中へ入っていこうとすると、入口付近で何やら仮装行列の 様な服装をした連中があちらこちらに見えた。よく見ると「なんてこったい!アニメの キャラクタの格好をしているではないか!」ここで私は既に脳ミソが暑さとの相乗効果 でぶっ飛んでしまった。ぶっ飛んでしまったあとはゾンビである。何が起こっても立ち 上がるんだ、怖くは無いぞ・・・と。 仮装行列を通り過ぎて建物の中へ入ると何の事はない、一部分で列を作っているだけで きちんと区画整理されていて歩けるだけの幅もあるではないか。これのどこが満員なん だ?と文句を言いながら、どの様な年齢層が来ているのかと回りを見渡してみた所、見 掛けが中学、高校生程度が多い中、どう見ても小学生としか言い様の無い人達から、ど う見ても30は過ぎている様にしか見えないという人達まで、比較的幅のある年齢層の 人達が歩き回っていた。建物の中は送風設備が動いているのかどうかは判らなかったが 異様な暑さだ。この暑さのお陰で清涼飲料水の自動販売機は、どこも売り切れ、しかも 入っていると思えば全く冷えていないといった有り様である。バスの中より地獄だった 事は言うまでもない。 とにかく何が展示されているのだろうかと、人が溢れている場所へ行って覗いてみた所 いきなり最初に目に飛び込んで来たのは、机の上に山積みされている「性器描写がかな り露骨な、既成キャラクタのコピーあるいはそれに似た類のイラスト」であった。はっ きり言ってワイセツ罪的な物件である。ちなみにその傍で座って客寄せをしていた人に 「あの、これ売ってるんですか?」と聞いてみた所「はい、500円です。いかがです か」と言われてしまい、私は愕然としてしまった。どうやらそういった類の物を売って いるらしい。マーケットと言われる理由はここにあったのだった。 その場所の同じ区画内で山積みされている本の表紙は、実に丁寧に、プロのマンガ家レ ベルで人物等が描かれているのではあるが、中身を見るとどれもこれも「なぜか悲しい くらいお粗末な絵柄ばかり」である。簡単に言うならば「下手」という事である。表紙 は客引きの為のダミーだったようである。下手でも内容が充実していればまだ良い方だ が、ひどいものになると落書きよりも低俗なものまである。「落書き程度のものを売る な」と言いたいがこんな事を言うと「ピカソ等の絵画は落書きに等しい」と言い出す輩 が出てくるだろうから、言いたいのを我慢しながら他の場所へ移動する。イラストだけ に限らず、マンガになっているものや、殆ど文章だけのもの、更にはアニメのセル画や その設定資料らしきものやイラスト付きの団扇を置いている所もあった。ここでちょっ と気になった事が一つある。たかが団扇をオークションで賭け売りするのは単に金儲け の為にやっている事なのだろうが、その様な行為は純粋にマンガやアニメを楽しむ人の 側から見れば最低の行為であると言えるだろう。商魂以前の問題として、人間関係を悪 くする要因であると思う。だが、そこまでされても買う人がいる事は事実だが、私から すれば、たかが二束三文の団扇でる。ちらっと金額を見たら1枚につき600~120 0円という値段で売れていた。今時アニメの下敷きでさえ200円前後だろうに。団扇 の価値より団扇に描かれているイラストの価値を問うのであれば、それなりのイラスト を描いて欲しいものだが、やはり二束三文的な絵柄しか無いのである。売る方も買う方 も完全に商品に対する価値観が麻痺しているとしか思えない状態であった。もっと面白 いのは、その団扇の売り言葉に「大好評で品薄の為オークションさせていただきます」 というものだった。「この大嘘つき」と言いたかったが、こんな事を言うと「物の価値 観が理解出来ないヤツ」と逆に言われそうで怖いので、言いたいのを我慢しながらまた 別の所へ移動するのだった。 どうやら長蛇の列を作っている場所程出来のいいものを扱っているらしい。事実その様 に列を作っていた場所に置かれている雑誌等は、表紙も中身も一部を除いては、ワイセ ツの度合いは別として、ほぼ納得のいく出来であった。しかし個人レベルで限界がある にせよ、二束三文的扱いになっている部分が多いのは悲しい。例えばB4サイズの用紙 を8ツ折りにして8ページ構成になっている、本とも呼べない様な本が、30円~50 円で売られている。まあ、製本の仕方はパズルみたいで感動するものがあったが。予算 の関係があるにせよ、その辺の複写機でコピーしたものをカットしてホチキスで止めた だけ、というのも悲しい。せっかく全国から集まって催される出し物が、この程度のも のばかりでは、この炎天下にわざわざ足を運んでくれたファン層に対して失礼なのでは ないだろうか。それでも欲しい人は手にいれる、と。 商売の知恵と言うか、へたをすると詐欺になりかねない様なものまであった。館内中央 付近で店舗を開いていたグループであるが、そこで売っていたAという本は、表紙と裏 面のイラストや色が違い、どちらが表紙か区別が付かないのをいい事に、本の束を表を 向けて1列、裏を向けて1列という置き方をして、いかにも2種類の本に見せかけてい た。見開きで1枚の絵になっているものは必然的に判るが、そういった形式では無く、 全く別のものであった。さらにB及びCという2冊の本は、外観上は「Bの表紙とCの 表紙は違う絵柄」で、裏面も同様であるから、全く別の本に見えるのだが、中に描かれ ている内容が全く同じというものまであった。ここまでいくと犯罪的行為である。この 様なものを中身をよく確認せずに買うと、買った側が損をするのである。全くこういっ たやり方は非常に汚い手段と言えよう。違う場所で同じものを売っていた所もあった。 これは何か協定でも結んでいるのだろうか判らないが、利点といえば客の混雑緩和、欠 点といえば買う側が迷うくらいだろうか。 特にとんでもない物と言えば、60ページ前後あり、丁寧に製本されているにもかかわ らず、真ん中の15~20ページ前後が完全にエンピツだけのラフスケッチの状態で製 本されている物があった。コメントに「間に合わなかったんです。ゴメンなさい」と書 かれていた。人をおちょくってるのかこいつらは?といった具合である。 非常に不服な点として、半数以上のグループがエログロを題材としていた事だった。確 かにそのエリアでは男性客が圧倒的に多い。結局は性的欲求不満解消のはけ口として利 用されるに過ぎない事を暗黙のうちに語っている。実例として「焼死体の写真」「幼女 の全裸写真」等があった。これが結果的に性的犯罪に結びつく事のない様に、私は祈る のだった。 同じ館内にはパソコン用プログラムを扱っている場所も多数あった。「写真だけでは面 白いかどうかが判断出来ないソフトウェアだけに、買うなら半分以上はスカを覚悟した 方がいい」と知人は言う。私も自分の機種用のプログラムを1本買ってきたが、そのプ ログラムは個人レベルで開発したにしては非常に良く出来ていた。すなわち「当たり」 という所だろうか。プログラムだけに限らず、グラフィックの絵やディスクマガジン、 データベースやオペレーティングシステムらしきものまで扱っていたのには驚かされた が、この様な中にもワイセツなソフトウェアは当然のごとくあり、2次元症候群は後を 断たない様である。つっ走るのもいいけれど、時にはブレーキもかけて欲しい。事故を 起こさないうちに。 ちょっと危ない話ではあるが「売り切れです。予約承っています」といった所が多かっ た様で、予約時に住所と名前等を書き、前金を払うわけだが、発送人等を明らかにして いない場合は危ない場合がある。そのままドロンされたり、商品の原型すら出来ていな かったりする可能性は無きにしもあらず、といった所だろう。安いと言っても800円 が50人分も集まれば4万円である。 違う場所も見ておこうと、隣の建物へ移ったのはいいが、何故か先程いた場所とは全く 雰囲気が違う。よくよく辺りを見渡せば女性ばかり。その女性に混じって男性がちらほ らと見える。展示しているものを眺めてみると、どうやら「少女マンガ系のエリア」へ 入ってしまった様であった。照れるじゃないかバカヤローというわけで、その場所は通 行人を決め込んで、抜け出てしまった。 さすがにうだる様な暑さの館内を2時間も見回っていると、くたびれてくる。結局見て 回れた建物はパソコン+アニメ関係の建物1つだけだった。その建物の一辺に整列され デモンストレーションをしていたFM-TOWNSは、一体何だったのだろうか。それ にしても富士通がこういった類の催し物に出展したというのも凄い話である。それにも 増して、その場所でテレビの報道陣関係者が非常に目立っていたのは、やはり旭岳の地 表文字事件や少女誘拐殺人事件で注目視されてきた「アニメファン」が引き起こした事 件を、どういった気持ちで「同じアニメファン達」が受け止めているのかを確かめる為 であろうか、それとも、この事件をきっかけに、アニメファンというものの実態を浮き 彫りにしようとしているのか、それとも単なる野次馬的行為なのだろうか。 蛇足だが、もしかしたら私が撮影されている可能性がある。全国ネットで自分が出るな んて恥ずかしいではないか。編集段階でカットされる事を祈るだけである。 帰る段階になって建物から外へ出ると、目の前は異世界。仮装行列パーティだった。こ こで私はふと思った。「要するに学院祭的感覚なのだろう」と。「開き直り」というよ りは「他の人がやってるのだから、ここではこれが普通なんだ」といった発想の様な気 がする。「赤信号皆で渡れば怖くない」の様に結局、人は集団行動をとる事を習性とし た動物だという事がうかがえる。 来る時はバスに乗れたが、帰りはバス停やタクシー乗り場が異常な込み様の為、乗車を 断念せざるを得ず、別のバス通りまで歩くはめになってしまった。 ======================================= 知人は言う。「コミケに行った人の次の行動は二通りある。一つは『もうダメだ、この 雰囲気には耐えられない。』と言って二度と来なくなる。もう一つは『これこそ私が求 めていたもの。』と言って泥沼にはまる。」と。その知人は以前より更に泥沼にはまっ ていった。私には引き止める権利は無い。 文章表現力の無い ニヤ