#119 Article 5336 Posted at 1994/05/16 17:42:08 by 汐風 鴎 (MAP3340) [NOVEL]

Subject: まこちゃんな小説

突然ですが…
  別に、5/14の放送を意識したわけでもなんでもないんですが、
  最近休んでいた間に書いた、小説を恥ずかしながらここにアップしておきます。

  主役はもちろん、まこちゃんです(笑)

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         笑顔の行方~モノローグ~



  あたしの名前は、木野まこと。
  背が高くて、自慢じゃないけど自分じゃスタイル抜群だと思ってる。
  得意なことと言えば料理かな。みんなおいしいって言ってくれるんだ。
  あと、あんまり言いたくないけど結構力持ちでけんかが強くて…こう見えても負けた ことがないんだ…
  友達は…少ないほうかな。だって、こんな姿形だしけんかが強いってくれば、
 みんな怖がって近づかないのは当然だよ。あたしが近づいてくると、みんなさぁっと
 雲の子を散らすように逃げちゃってさ、遠巻きにあたしを見ながらおっかないとか
 不良だとかひそひそ話してるんだ。最初は何でかなって思ったけど、だんだんそれが
 分かってくると、ああ、もういいやって思って、なるべく気にしないように頑張った
 んだ。
  …でも本当は、とっても寂しかったんだ。
  みんな見かけだけで判断してるんだ、もっと内側の、本当のあたしを見て欲しい、
 あたしは絶対みんなが思ってるような人間じゃないんだって、ずっと思ってた。
  でも、だれもそんな心の叫びになんか気がついてくれないんだよね。
  だから、今度はあたしの方から行動を起こしてみたんだ。あたしの方からみんなの
 輪の中に入っていって、話をして、あたしが本当はどんな人間なのか理解してもらい
 たかった。
  だけど、そういうことをしても結局逆効果しか出ないんだよね。みんなびっくり
 して、余計に怖がってますますあたしから離れてった…気味悪かったんだろうね、
 いつもおっかないって思ってる人がいきなり輪の中に割りこんでくるんだから。脅し
 にでも来たのかなって顔されちゃったよ。

  ちょうど今の十番中学の前の学校の時かな…初めて友達らしい友達ができたのは。
  あたしと同じで、とてもまっすぐで正直な子。一生懸命あたしを慕ってくれて…
 本当に、あたしを心の底から理解してくれた。初めての、大事な親友だった。
  でも、あたしとひとつだけ違うところがあったんだ。そう、彼女はあたしと違って
 心からの、本当の笑顔を持ってたんだ。
  あたしはぜんぜん、そんな笑顔が作れなかったんだ、そのころは。
  ほら、遠足とかに行くとさ、よくクラスで写真を取ったりするじゃない? その
 写真に写ってる顔を見て、あたし自身ぞっとしたんだ。
  ぜんぜん笑ってる顔じゃないんだ。顔の神経を引きつらせて、無理に…それで目は
 笑ってないんだ。心から笑ってない…まるで本当の顔の上に仮面の笑顔を被せてる、そ んな感じだった。
  気付いたときには、自分が嫌いになったよ。なんで自分はこんな奇妙な表情しかで
 きないんだって。
  それから、必死で練習したよ。鏡とにらめっこして、こんな感じかなって。その
 ふられた先輩に言われたんだ。もっと輝いて笑えるようになったらもう一度つき合っ
 てもいいって。
  でも、そんな笑顔は本当の笑顔じゃなかったんだよね。
  本当の笑顔って、うれしいときとか楽しいときとか、心が明るくうきうきしてる時
 じゃないと出来ないんだ。あたしが鏡の前でしてたのは、やっぱり作り笑いだったん
 だよね。
  楽しくてうきうきしてる時なんて、ほとんどなかったな…友達はいないし誰かと
 遊びにいくなんてことは出来なかったし…料理してるときくらいかな、あの頃一番
 楽しかったのは。
  もちろんうらやましかった。ああ、この子の笑顔ははなんて輝いてるんだって。
 正直言うと嫉妬してたんだよね、その子の笑顔に。
  そんな自分がますます嫌いになったよ。あたしはなんて欲張りな人間なんだって。
  でも、その気持ちを正直に打ちあけたらその子はこう言ってくれたんだ。
 「気にすることないよ。まこちゃんにだって、きっと本当の、心からの笑顔ができる
 時が来るはずよ。そのうち、ううん、絶対に来るわよ。」
  うれしかった。慰めじゃない、この子はあたしを見て本当にそう思ってくれて
 いる。涙が出るくらい、うれしかった。
  だから、十番中学に転校することになってその子と別れるのはつらかったし、それ
 以上に怖かった。
  だって、彼女はあたしのただ一人の親友なんだもん。彼女と別れて、新しい学校で
 また彼女みたいな子に出会えるわけじゃないし…別れたくなかったんだ。
  でも、その子はその時もこう言ってくれたんだ。
 「心配することないよ。まこちゃんはいい人だから、絶対新しい学校に行ってもすぐ
 に友達出来るわ。大丈夫、あたしが保証してあげる」
  その時は、本当に泣いちゃった。やっぱりこの子と別れるのは嫌だ。でも、あたし
 は行かなくちゃいけない。
  セーラー戦士としてのあたしが呼んでるんだ。どうしても行かなくちゃいけない。
 その時の彼女の顔は、いまでもはっきりと覚えてる。とても輝いた、心から笑った
 本当の笑顔。最後まで、笑顔だった。あたしみたいに涙なんか流さずに。
  結局、あたしは彼女には何もしてやれなかった。あたしは彼女にいっぱい教えて
 もらったものがあったのに、何もしてやれなかった。
  
  そして、あたしは今ここにいるんだ。
 十番中学の生徒の木野まことであり、愛と正義の戦士のセーラージュピターであり…
 本当はどっちも同じあたしなんだけどね。
  友達は、彼女の言ったとおり、ここにもいたんだ。
  セーラー戦士の仲間だけど、それ以上にこのあたし、木野まことを分かってくれて
 いる本当の友達が…
  その子たちも彼女と同じ、心からの輝いた笑顔を持ってて、心からあたしを慕って
 くれるんだ。
  そしたらさ、人間って不思議だよね。まわりがそんなふうだと、気付かないうちに
 自分までそういうふうになっちゃうんだよね。
  その子たちと海に行ったときに取った写真を見て気がついたんだ。あたしも、心か
 ら笑えるようになったんだってね。
  やっと本当の、輝いた笑顔が…出来るようになったんだってね。

  今度の日曜日に、彼女に会いに行くんだ。もちろん大親友の彼女だよ。
  彼女、びっくりするだろうなぁ。あたしが心から笑えるようになったのを見て。

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  実はこれ、1年ほど前にあるネットで書いた詩を小説に書き直したものです。

  元々のネタは、カセットコレクション3のB面と原作第4巻のひとこまから。
  まこちゃんがなぜ、うさぎ達のような仲間の輪に溶けこめることが出来たのか…
  それはうさぎ達が心からまこちゃんに接する以上にうさぎ達の表情、この作品では
 「笑顔」に集約していますが、その表情が彼女の何かにフィードバックしたのでは
  ないか、というのがこの作品を書いた最大の理由です。

  タイトル「笑顔の行方」は、ご存じDreams Come Trueの1曲から。
  ただし、作品の雰囲気としては鈴木彩子の「太陽になれない星」の方が
  近いと思います。

  ご意見、ご感想ございましたらぜひください。


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